ゆっくりさよならをとなえる/大好きな本
川上弘美のエッセイ集『ゆっくりさよならをとなえる』を再読している。一緒に、先日かった彼女のはじめての書評集『大好きな本』も並列させて読んでいる。
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/11/24
- メディア: 単行本
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- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2007/09/07
- メディア: 単行本
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本棚に眠っていた『ゆっくりさよならをとなえる』を引っ張り出すきっかけになったのは『大好きな本』と一緒に買った『ハヅキさんのこと』なのだ。それとこの間、お茶の水女子大学の徽音祭に行って広めの教室の後ろの方から実物の川上弘美さんをはじめてみた、遠めから眺めていたといった方がより実際に近いのだけれど、そのこともあって最近川上弘美熱がぶり返しているのだ。ここ数日の入れ込みようは傍から見たらちょっと異様にうつるかなといった具合で、本人にしても恋愛中の熱にうかされているような気分のただなかにある。
エッセイを再読する、ということは僕はあまりしないのだけれど、あらためて読むと発見がいっぱいあって面白い。というのも、主要な作品はほとんど読みつくしてしまって、彼女にまつわる「知識」がふんだんに蓄えられてしまっているためエッセイの可笑しさが増幅されて、思わず吹き出してしまう。例えば次のようなところ。
『ゆっくりさよなら〜』から引く
三月某日 雨
風邪をひく。おなかにくる風邪である、食欲がない。お酒が飲めない。とても悲しい。(春休みの憂鬱)一月×日 近所の本屋に行く。今までの人生で一番多く足を踏み入れた店は本屋、次がスーパーマーケット、三番めは居酒屋だと思う。なんだか彩りに欠ける人生ではある。(歩き読み)
『大好きな本』から引く
もしも大田さんの本がなければ、わたしは今よりずっと身の置きどころのない日々を送っていることだろう。反省と悔恨に満ちた生活をしていたことだろう。もしかしたら反省と悔恨の結果、もう少し有意義な人生を過ごしていたかもしれない。
でも、有意義な人生なんて、くそくらえだ。ある時は頑固に、ある時は憮然として、そしておおかたの時はぼんやりと嬉しく楽しく、わたしは酒を飲みたい。人生を過ごしたい。(太田和彦 『ニッポン居酒屋放浪記』新潮文庫 疾風篇)
なんかもう、読んでいるだけで幸せです。
なんかもう、彼女にとって酒を飲むことこそ人生そのものであるかのようなこの書き方が素敵すぎます。