富士山一周記

 富士へ旅行へ出る。
 先週、大学の友達の女の子からメールで旅行の誘いをうけて連休をフジヤマの麓へ出かけたのである。あまり計画的な旅行でもなかったので当日になってもあまり実感がわかず、朝の5時に目を覚ましあわてて着替えとタオルと歯ブラシをバックパックへと詰め込み、財布と携帯をもって中央線の電車に飛び乗ったのが8時20分だった。空は雲ひとつなく晴れ渡り絶好の旅行日和であった。三鷹ホリデー快速河口湖1号に乗り換え、車中で同行のメンバーと合流した。メールをくれたなほ氏、なほ氏と同じ大学オーケストラに所属する他大工学部のアマノ氏、なほ氏のおさななじみのマキ氏、僕とおなじ物理教室のひでほ氏の四人である。このうち同じ学科のなほ氏としゅうほ氏は顔見知りで、アマノ氏とマキ氏とはこのときが初対面であった。電車が進むにつれて車窓にうつる木々の色が鮮やかさを増してゆくのに比例するように、今回の旅行のメンバーとも少しずつ打ち解けていくことができた。終着の河口湖駅で下車し一服煙草をのんでから、マツダのレンタカーを借り、秋空に栄える富士の山のを西回りで一周するドライブへ出ることになった。
 途中、白糸の滝へ立ち寄る。壁から降り堕ちる白糸の滝壺にくもる水しぶきに散乱された陽光が虹を掛け、幼き頃に想いを馳せた虹の橋のたもとを初めて目にし、しばし我を忘れ見入る。時刻は正午を過ぎてはらの虫によって現実へひきもどされ、ここの名物らしいやきそばを食べる。さらに車を進め、樹海を横切り、すれちがう高級車やらをながめつつ、道端にライフルを持った自衛隊が列を成して行軍するのやらに遭遇し、富士サファリパークでカンガルーと戯れ、また路上を闊歩するネコ科の猛獣たち、交尾をはじめるライオン、まぬけなかおのラマやらくだやシマウマや一角獣とも邂逅する。
 河口湖へ戻り、ダイエーで充分量の酒と鍋の具材を買い込み、宿にとった林の中のバンガローへ向かう。初日の夜は牡蠣鍋をかこんで大いに呑んだ。枡になみなみ注いだ越の寒中梅をのみ、久しぶりに酔っ払った。鍋を囲むと一気に親密感が増すから不思議である。朝、初めて会ったとは思えないほど和気藹々とした雰囲気の夜だった。