若い読者のための短篇小説案内

若い読者のための短編小説案内 (文春文庫)

若い読者のための短編小説案内 (文春文庫)

現代日本文学という講座をとった。このクラスでは短篇を読んで数人がプレゼンし、それについてディスカッションをする。村上春樹のこの本はアメリカの大学の日本文学だか創作論だかのクラスで似たようなことをやっていたのを収めていたような記憶があったので再読してみようと思って本棚から引っ張り出してきた。この本では第三の新人とよばれる日本の戦後文学の作家六人の作品が取り上げられているのだけれど、数年前にはじめて読んだときには吉行淳之介とか安岡章太郎とか実家の母親の本棚にある日本文学全集の背表紙で名前だけ見たことがあったなぁという感じで、昔々の作家さんという遠い存在だった。今年になって秋に井原西鶴についての講義をとって吉行淳之介訳の好色一代男を読んだり、小島信夫保坂和志との往復書簡を読んだり、あるいは川上弘美の書評集で丸谷才一の著作が取り上げられていたりして、僕は彼らに少しだけ親近感というか、精神的な距離の縮まりのようなものを感じるようになったようだ。

まぁ、ともかく、あとがきを読んでみた。

最初にプリンストン大学で、二度目にタフツ大学でこの授業(らしきもの)を行い、帰国してからは文芸春秋社で、この本を書きあげるために、それに似たディスカッションのようなものを一年間にわたって定期的に行った。

いずれの場合も、僕が主催者として参加者(学生)に要求したことが三つある。ひとつは何度も何度もテキストを読むこと。細部まで暗記するくらいに読み込むこと。もうひとつはそのテキストを好きになろうと精いっぱい努力すること(つまり冷笑的にならないように努めること)。最後に、本を読みながら頭に浮かんだ疑問点を、どんなに些細なこと、つまらないことでもいいから(むしろ些細なこと、つまらないことのほうが望ましい)、こまめにリストアップしていくこと。そしてみんなの前でそれを口に出すのを恥ずかしがらないこと、である。この三つは、真剣に本を読み込むにあたって、僕自身が常日頃心がけているポイントでもある。

のっけから、というか、実際はむすびだけれど、へこたれる。「何度も何度もテキストを読むこと、細部まで暗記するくらいに読み込むこと」自分は、もう、てんで甘ったれでしたスミマセン。