2008年の十品。その8, 9, 10

川上弘美
いとしい (幻冬舎文庫)『いとしい』 ハヅキさんのことハヅキさんのこと』 新潮 2009年 01月号 [雑誌]「aer」
なんやかやいっても今年一番夢中になっていたのは 50歳の彼女です。
思春期の不可思議な幻想世界にまぎれこむ「いとしい」 は読んでいるときはそれほど強い衝撃のようなものは感じなかったのだけれど、あとからじわじわ来るそんな 小説です。

ハヅキさんのこと、エッセイ風に書かれた小説 換言すれば川上弘美私小説であって、彼女の魅力を一番感じられる一冊でした。

「aer」にみられた、子をはらんだ女の動物性、神話性を、自己客観的に綴ったこの小品は、すごい。の、一言に尽きます。語彙が乏しいのです、僕は。 語りえぬものに対しては沈黙しなければならないといったのは確かヴィトゲンシュタインだった気がするけれど、すごい。と、一言くらい言っても
許されますよね?