2008-12-31から1日間の記事一覧

2008年の十品。その8, 9, 10

川上弘美 『いとしい』 『ハヅキさんのこと』 「aer」 なんやかやいっても今年一番夢中になっていたのは 50歳の彼女です。 思春期の不可思議な幻想世界にまぎれこむ「いとしい」 は読んでいるときはそれほど強い衝撃のようなものは感じなかったのだけれど…

2008年の十品。その7

「焚火」志賀直哉 今読んだばかりなのだけれど、小説を読んで感動したのは、実はこれが初めてなんじゃないかと、今まで感動したとか思っていたのは幻想だったんじゃないかと そんな気にさせられた「小説の神様」直哉の一篇。 僕は本当の小説ってものを今まで…

2008年の十品。その6

「山高帽子」内田百輭 芥川の自殺と狂気を題材にした一篇だと知って あらためて読んでみると、これがすごい。百輭の内なる狂気と、芥川の抱える狂気への不安の 呼応が、なんともいえず心揺さぶられるのでした。 大正という儚くも短いひとつの時代のの終焉を…

2008年の十品。その5

『影の現象学』河合隼雄 自分の影を知ること、認めたくない自分の側面に 光を当てること。それはつらい作業かもしれないけれど閉塞感の打破には必須であることを知らしめてくれた一冊。芸術とは何かということについても考えさせてくれた、自分にとってかけ…

2008年の十品。その4

『好色一代男』西鶴 初めて読んだ西鶴。流麗な文体に惚れこみました。アメリカ的隠遁を森の生活にとるとすれば日本的隠遁は西鶴の諸国遍歴でしょう。 女御島への出立のその後の世界は 描かれていないけれど、そこにというかその先にポストモダンの可能性をみ…

2008年の十品。その3

『センネン画報』今日マチ子 文句なしに、今年一番のマンガです。毎朝ブログをみて 青の世界に浸り、一日を乗り切る気力を奮い立たせてもらいました。聖おにいさんの仏陀とイエスの腐女子的 立川ライフも捨てがたいですが自分で買って読むにはいたらなかった…

2008年の十品。その2

『コンコルド広場の椅子』東山魁夷 春に長野の雪山へ行ったときに東山魁夷の緑の絵に惚れこんだ、日本画の技法と西洋絵画の技法の融合。そして絵に添えられた詩とが見事に調和した一冊。調和というのは自分にとっては今年のテーマのひとつだったかもしれない…

2008年の十品。その1

『森の生活』ソロー これ一冊に限らないのだけれども、今年は現実世界を半分だけ離れて隠遁するような話や映画をよく喰ったので。 キャリアなんて概念は20世紀の遺物だと言っていた 『荒野へ』into the wild の主人公も(これ、原作がノンフィクションなん…